情報化社会の危うさ

今日の授業での出来事。住宅設計課題の宿題で、単位寸法(お風呂、トイレ、キッチンなどの寸法)を調べてくることを課したところ、2/3の学生はきちんと資料集成や、建築雑誌などから抜粋したものを提出していたけれど、1/3がとあるサイトを出力したものだった。

これが、ま~よくできた資料で、計画の教科書になるんちゃう?っていうくらい、住宅の各部の寸法がおさえられている。これがサイトで無料ダウンロードできるんだから今の時代は凄い。

よくよく、他の先生たちと資料の内容をみていると、ほんとよくできているんだけど、ところどころに「??」な記載がある。

というのは、例えば、

「玄関ドアの吊り元が靴箱側に取れない場合はドアと収納家具との間は200mm以上の空きをとる」

と書かれてある。

これは、計画学的寸法でもなんでもない。別に200なくたって大丈夫なはずだ。

じゃぁ、なぜこんなことが書かれているのか。

そこで、いったいこのサイトはどこが運営してるんだ?ということになって見てみると、

そのサイトというのは「すむすむ」http://www.sumu2.com/というサイトの中の 「間取りづくりですぐに役立つ」でパナソニックが運営している。

そこで、いろいろ納得。

さっきの例なども含め、ここに書かれている寸法は、一見計画学的寸法かと思いきや、パナソニックの製品が納まるための寸法なのだ!

よくよく見ると、そこに描かれている挿絵の中の建材や家電も全部パナソニックのもの。

洗面脱衣スペースの寸法にしてもそう。パナソニックのドラム型洗濯機が入り、パナソニックのシステム洗面化粧台が納まる寸法なのだ。

それが、あたかも、住宅設計においての当たり前の寸法のように書かれている。

そう、これを見て、例えば建売業者や設計者が設計すれば、そこにぴったりとパナソニック製品が納まるわけ。

パナソニックは電化製品だけじゃなく、ドアや収納家具などの住宅建材も多く扱っているから、それらの製品を「売る」ための資料なのだ。

こりゃ凄い。

一見すると、そのウラがわからないとこが凄い。

これは、きちんと学生にこの資料の危うさを説明しないと!ということで、注意と説明をしたけれど、

今回、私たちはこのような宿題を出したから、たまたまこのサイトを知ったわけで、きっとどこの大学や専門学校の学生も住宅設計の課題でこのサイトに行き着く子がいるだろう。

そして、いつの間にか、不思議な寸法で設計していく学生が増えていくんだろう。

どこの学校も注意が必要な気がする。

決して全部が悪い資料じゃない。

でも、誰か分かっている人間が、この資料の見方を教えてあげないといけない気がする。